対象疾患
変形性股関節症
変形性股関節症とは、股関節の軟骨が摩耗して炎症を起こし、関節の変形や痛みを引き起こす病気です。歩行やしゃがむ動作が困難になり、日常生活の動きに支障をきたすことがあります。

大腿骨骨頭壊死症
大腿骨頭壊死症とは、太ももの骨の先端部分である大腿骨頭への血流が障害され、骨が壊死(細胞が死んでしまう)する病気です。壊死が進行すると、骨の内部がもろくなり、大腿骨頭がつぶれて(陥没)、関節の形が崩れ、強い股関節痛や動かしにくさが現れます。
この疾患は、30〜50代の比較的若い年齢層の男性に多く見られ、放置すると進行して変形性股関節症へと移行することがあります。
原因としては、ステロイド薬の大量または長期使用、過度のアルコール摂取がよく知られています。たとえば、膠原病、ネフローゼ症候群、臓器移植後などでステロイドを使用している方が発症することがあります。また、明確な原因が見つからない特発性の壊死も少なくありません。
初期の段階では無症状のこともありますが、徐々に歩行時の違和感や痛みが出現し、進行すると階段の上り下りや靴下をはく動作が困難になります。股関節以外(太もや膝)に放散する痛みとして感じることもあり、診断が遅れることもあります。
診断には、MRI検査が非常に有効です。X線では初期の変化が映らないことも多いため、痛みが続く場合には早期のMRI撮影が推奨されます。MRIでは壊死の範囲や骨頭の形状が明確にわかり、進行の程度に応じた治療方針の決定に役立ちます。
大腿骨頭壊死症は、早期発見と適切な対応によって進行を抑えられる可能性がある疾患です。当センターでは、画像診断から病期の評価、治療方針のご相談まで、個別に対応しています。股関節の痛みや違和感がある方は、お早めにご相談ください。
関節リウマチによる股関節障害
関節リウマチは、自己免疫の異常により関節の内側にある滑膜が炎症を起こし、軟骨や骨を破壊する慢性関節疾患です。手や膝の関節に加えて、股関節も侵されることがあります。
股関節に炎症が及ぶと、徐々に軟骨がすり減り、関節の形が変形していきます。歩行時の痛みやこわばりが出現し、進行すると可動域の制限や跛行(足を引きずる歩行)が見られるようになります。
発症は30〜60代に多く、女性に多い疾患です。生物学的製剤やJAK阻害薬などの治療の進歩により関節破壊の進行は抑えられるようになってきましたが、病期が進んだ場合には人工関節が必要になることもあります。
大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折(SIF)
大腿骨頭軟骨下脆弱性骨折(SIF)は、はっきりした外傷がないにもかかわらず、大腿骨頭の軟骨のすぐ下の骨に微細な骨折が起こる疾患です。骨粗鬆症を背景にした高齢女性に多く、股関節に突然の強い痛みが出るのが特徴です。
骨折が進行すると骨頭がつぶれ、変形性股関節症に進展するリスクがあります。初期のX線では異常が見つからないことも多く、MRIが診断に非常に有効です。
原因としては、骨の脆弱化や骨盤形態の異常などが関係していると考えられています。早期診断と適切な対処により、骨癒合や痛みの改善が期待できることから、早めの受診が重要です。症状が遷延、悪化する場合には、人工股関節手術が必要となります。
小児科疾患由来の股関節症
小児期疾患と変形性股関節症の関連について
小児期に発症する先天性股関節脱臼、ペルテス病、大腿骨頭すべり症などの股関節疾患は、成長とともにいったん落ち着いたように見えても、成人後に変形性股関節症へ進行することがあります。
これらの疾患では、股関節の構造が不完全なまま成長することが多く、骨頭と寛骨臼の適合が悪いために、関節軟骨への負担が局所的に集中します。その結果、数十年かけて軟骨が摩耗し、関節の変形や痛み、可動域制限が出現します。
若年~中年層で変形性股関節症と診断される方の中には、小児期の既往歴が背景にあるケースも少なくありません。股関節に違和感がある方は、過去の病歴をふまえて早めにご相談ください。